6 銘柄の勝率は、どれも 29.9〜31.0% に収まりました。EMA 20 / 50 のクロスで売買すると、利益で終わったのは 10 回に 3 回ほどです。それでも 6 銘柄中 4 銘柄では、合計の損益がプラスでした。
基本形として紹介される売買ルール
短期の移動平均が長期の移動平均を上抜けたら買い、下抜けたら売り。上抜けをゴールデンクロス、下抜けをデッドクロスと呼び、移動平均を使った手法の基本形として紹介されることがあります。今回は短期を EMA 20、長期を EMA 50 にして、過去データに当てはめました。
- 対象: USD/JPY, EUR/USD, GBP/USD, AUD/JPY, EUR/JPY, XAU/USD(ゴールド)
- 時間足: 1 時間足
- 期間: 2010 年 10 月 8 日〜2026 年 10 月 8 日
- エントリー: EMA 20 が EMA 50 を上抜けた足の終値で買い、下抜けた足の終値で売り
- 決済: 反対のクロスが出た足の終値で決済(損切り・利確の指定なし)
- 数量: 1 ロット固定。損益は pips で集計(ロットの大小は勝率・PF・pips に影響しない)。口座残高の制約(証拠金・ロスカット)は考慮しない
- 約定: エントリーも決済も足の終値
- 含まないもの: スプレッド・スリッページ・スワップ
- データ: Dukascopy の 1 分足を集約したもの
- 注意: 損切りは置いていない。反対のシグナルが出るまで損失が続く
- 再現: 条件は自然言語バックテストにそのまま書けます。ただし期間はフリーが直近 1 年・プロが直近 3 年までで、口座残高による制約の扱いも違うため、この記事と同じ数字にはなりません
6 銘柄で並べた PF と損益
PF が 1 を超えたのは USD/JPY、AUD/JPY、EUR/JPY、XAU/USD(ゴールド)の 4 銘柄でした。合計 pips がプラスだった銘柄も、この 4 つと同じ顔ぶれです。
| 通貨ペア | トレード数 | 勝率 | PF | 合計 pips | 最大 DD(決済ベース・pips) |
|---|---|---|---|---|---|
| USD/JPY | 1930 | 31.0% | 1.14 | +7,259 | 2,573 |
| EUR/USD | 2047 | 29.9% | 0.90 | -5,807 | 8,802 |
| GBP/USD | 2001 | 30.3% | 0.97 | -1,765 | 4,459 |
| AUD/JPY | 1957 | 30.9% | 1.17 | +8,479 | 2,668 |
| EUR/JPY | 1940 | 30.7% | 1.03 | +1,721 | 3,505 |
| XAU/USD(ゴールド) | 1811 | 30.0% | 1.13 | +19,358 | 12,030 |
PF が最も高かったのは AUD/JPY の 1.17(8,479 pips)、最も低かったのは EUR/USD の 0.90(-5,807 pips)でした。勝率 30% 前後で PF が 1 を超えたので、この 4 銘柄では、勝ちトレード 1 回あたりの利益が負けトレード 1 回あたりの損失を上回っていた計算になります。EUR/JPY は PF 1.03、1 トレードあたり 0.9 pips で、プラスとはいえ 0 に近い水準でした。
ゴールドは合計 19,358 pips と数字が大きく、最大ドローダウンも 12,030 pips ありました。ゴールドの pips は FX ペアより桁が大きく、足し合わせると合計が金の成績で決まってしまうので、銘柄をまたいだ合計は出していません。
2018 年 10 月の前後で比べる
期間を 2 等分すると、合計 pips の符号が前半と後半で入れ替わったのは EUR/USD だけでした。
| 通貨ペア | 前半(〜2018 年 10 月) | 前半 PF | 後半(2018 年 10 月〜) | 後半 PF |
|---|---|---|---|---|
| USD/JPY | +3,345 pips(1019 回) | 1.14 | +3,915 pips(911 回) | 1.14 |
| EUR/USD | -6,763 pips(1107 回) | 0.82 | +956 pips(940 回) | 1.05 |
| GBP/USD | -194 pips(1019 回) | 0.99 | -1,571 pips(982 回) | 0.95 |
| AUD/JPY | +2,363 pips(1036 回) | 1.08 | +6,116 pips(921 回) | 1.28 |
| EUR/JPY | +1,402 pips(1027 回) | 1.04 | +319 pips(913 回) | 1.01 |
| XAU/USD(ゴールド) | +2,377 pips(889 回) | 1.04 | +16,981 pips(922 回) | 1.17 |
各値は四捨五入しているため、前半と後半の和が合計と 1 pips ずれることがあります。
EUR/USD は前半が -6,763 pips(PF 0.82)、後半が 956 pips(PF 1.05)です。通期のマイナスは、ほぼ前半の損失から来ていました。
USD/JPY は前半・後半とも PF 1.14 で、2 つの期間に差がありませんでした。ほかの銘柄は符号こそ保ったものの、中身は動いています。AUD/JPY は PF 1.08 から 1.28 へ、ゴールドは 2,377 pips から 16,981 pips へ増え、EUR/JPY は 1,402 pips から 319 pips に縮みました。GBP/USD は前半・後半ともマイナスです。
EMA の組み合わせを変えたとき
同じ期間・同じ銘柄のまま、EMA の組み合わせだけを 10 / 30 と 50 / 200 に変えて比べました。
| 設定 | USD/JPY | EUR/USD | GBP/USD | AUD/JPY | EUR/JPY | XAU/USD(ゴールド) | プラスの銘柄 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| EMA 10 / 30 | +9,706(3452 回) | -2,652(3638 回) | +3,068(3494 回) | +6,888(3487 回) | +6,189(3450 回) | +39,726(3240 回) | 5 / 6 |
| EMA 20 / 50(基本) | +7,259(1930 回) | -5,807(2047 回) | -1,765(2001 回) | +8,479(1957 回) | +1,721(1940 回) | +19,358(1811 回) | 4 / 6 |
| EMA 50 / 200 | -1,209(659 回) | -2,189(663 回) | -3,485(677 回) | +2,415(634 回) | -3,370(678 回) | +11,081(569 回) | 2 / 6 |
合計 pips がプラスの銘柄は、EMA 10 / 30 で 6 つ中 5 つ、EMA 20 / 50 で 4 つ、EMA 50 / 200 で 2 つでした。トレード数は 20,761 回、11,686 回、3,880 回と、EMA を長くするほど減っています。
3 つの設定すべてでプラスだったのは AUD/JPY とゴールド、すべてでマイナスだったのは EUR/USD です。USD/JPY は 10 / 30 で 9,706 pips、50 / 200 で -1,209 pips と、設定しだいで符号が変わりました。EUR/JPY(50 / 200 で -3,370 pips)と GBP/USD(プラスは 10 / 30 の 3,068 pips だけ)も、同じように入れ替わっています。
20 / 50 の表だけを見ると、組み合わせを少し動かしたときの崩れ方は分かりません。成績の良い数字を選ぶほど過去の値動きに合わせ込む方向へ寄る点は、カーブフィッティング(過剰最適化)を避けるにはで扱っています。
この数字に入っていないもの
損益は 1 ロット固定の pips で集計しており、次のものは含めていません。
- スプレッド・スリッページ・スワップ(実際の口座ではこの分だけ悪くなります)
- 証拠金やロスカットなど、口座残高の制約
- 保有中の含み損(最大ドローダウンは決済した時点の累積で見ています)
損切りを置いていないため、保有中に逆行すると、反対のクロスが出るまで損失が続きます。件数は各銘柄 1,811〜2,047 回ありますが、期間は 16 年を 1 本通しただけで、条件もクロスの向きだけを見る単純なものです。ここに並んだ数字は、この期間の過去データでこうだった、という記録にとどまります。
今回の条件も、自然言語バックテストで日本語で条件を書き、DSL(条件の形式)を確かめれば同じ条件で回せます。